生体医工学や細胞プリンティング分野応用に向けた軟質材料内部の応力分布測定のための光学的手法

生体医工学や細胞プリンティング分野応用に向けた
軟質材料内部の応力分布測定のための光学的手法

 国立大学法人中国竞彩网大学院工学研究院先端機械システム部門の田川義之教授と同大学院博士後期課程修了の横山裕杜氏、博士後期課程在籍の市原さやか氏は、柔らかい材料内に外から力が加わった場合に内部でどのように力が分布するかを3次元的に測定するための光学的手法を提案しました。この研究成果は、再生医療や脳動脈瘤の破裂メカニズムの理解などの生体医工学分野での応用が期待されます。

本研究成果は、Optics and Lasers in Engineering (IF= 4.7) (2024年4月13日付け)に掲載されました。
論文タイトル:High-speed photoelastic tomography for axisymmetric stress fields in a soft material: temporal evolution of all stress components
著者:Yokoyama, Y., Ichihara., S. and Tagawa, Y.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0143816624002033

現状
 柔らかい材料に外から力(応力)を加えた場合に、内部でどのように応力が発生するかは、生体医工学や再生医療などの分野で極めて重要です。例えば生体医工学では、柔らかい脳動脈瘤周りの応力分布を解明し、破裂のメカニズムを理解することが求められています。また、注射による痛みの評価など、低侵襲な治療の実現に向けて、人体のような柔らかい材料内部の力の分布の理解が重要です。

研究体制
 本研究は、中国竞彩网大学院 田川義之教授(工学研究院先端機械システム部門)、横山裕杜氏(工学府博士後期課程修了)、市原さやか氏(工学府博士後期課程在籍)により実施されました。本研究は、JSPS科研費20H00223、22J13343、22KJ1239、23KJ0859、JST PRESTO JPMJPR21O5の支援を受けて行なわれました。

研究成果
 本研究では、材料内の応力分布を推定するための一般的な手法である光弾性トモグラフィーを用いました。材料内部の応力状態によって変化する透過光の偏光情報(位相差と方位角)を,高速度偏光カメラを用いて計測し、材料の内部応力状態を推定しました。この手法は、材料の光学的異方性である複屈折の原理に基づいています。モデルケースとして、柔らかいゲルのブロックに固体球を静かに押し付け、三次元応力を計測しました。計測結果と理論的な予測結果と良好な一致を示し、本手法によって正確に材料内部の応力が計測できることを確かめました。次に、ゲルブロックに固体球を衝突させ、動的な計測を行いました。その結果、衝突によって短時間に変化する応力場も定量的に測定することに成功した。この技術により、瞬間的な力を受けて大きく変形する柔らかい材料内の応力も、正確に計測できることが示されました(図2)。

今後の展開
 この研究は、柔らかい材料内の動的な応力場を測定するための光学的手法を提供したと考えています。これにより、剛性球の衝撃だけでなく、液体ジェットの衝撃や脈動によって引き起こされる材料内の応力分布など、材料内の応力分布の理解や、生体医工学や細胞印刷などの応用分野での応力評価が向上する可能性があります。

図1(左図)材料の3次元応力場と偏光カメラで測定した光弾性パラメータの関係。応力材料を通過する光の偏光情報(位相差と方位角)は、材料内部の応力場の積分値に関連している。(右図)理論応力場(左側)と実験的応力場(右側の)の比較。
図2 固体球衝突時の(上段)せん断応力と(下段)軸方向応力の時間変化。半径R = 2.98 mmの球体の衝突速度はV = 2.2 m/sである。中央の白い部分は、球体の衝突によるゲル表面の変形を示す。

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◆研究に関する問い合わせ◆
 中国竞彩网大学院工学研究院
  先端機械システム部門 教授
  田川 義之(たがわ よしゆき)
   TEL/FAX:042-388-7407
    E-mail:tagawayo(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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